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第10期会長よりご挨拶

野外教育における不易流行

平野 吉直(信州大学理事・副学長)

 この度、永吉宏英前会長の後を受け、日本野外教育学会の会長にご推挙いただきました。学会の設立当初から関わってきた者として大変光栄に感じる一方で、私のような者が務まるのかどうか、その役割と責任の重さに身が引き締まる思いです。諌山邦子副会長、坂本昭裕理事長はじめ学会役員の皆様のご協力をいただきながら、日本野外教育学会の充実・発展のために全力を尽くし、職責を果たしていく所存です。

 1997年10月に開催された学会設立総会から、間もなく丸24年を迎えます。1997年と言えば、消費税率が3%から5%に引き上げられ、サッカー男子日本代表がワールドカップ本選への初出場(フランス大会)を決めた年でもありました。学会設立が「ついこの間」のことのように感じる反面、十二支の丑(うし)年がふた回りしたわけで、当時生まれた方が本学会で活躍されていることを考えると、それ相応の歴史を感じます。

 この24年の間に、私たちを取り巻く社会は激変しました。科学技術の進展、特にここ数年のデジタル革新の進行は目覚ましく、AI、IoT、Society5.0、GIGAスクール、5G、DXなど、初めて聞く言葉が次から次へと生まれ、その度にネットで意味や背景を調べ、自らの生活や仕事に及ぼす影響を思いめぐらすことが続きました。そしてCovid-19の感染拡大は、世界中の人々の生活を一変させ、「ニューノーマル」という言葉が私たちの日常を闊歩するようになってきました。オンライン授業、オンライン会議、オンライン学会大会などが、当たり前のように行われています。

 「不易流行」という言葉。若い頃は、『新しく変化する「流行」に目を奪われ、変化させてはならない本質的な「不易」を見失うな』という教えであると間違った解釈をしていました。本来の「不易流行」の意味は、松尾芭蕉の俳諧理念のひとつで、諸説あるものの「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと」とされています。本学会のこれまでの活動をふり返ると、学術団体としてのアカデミズムの追求に加え、野外教育の発展を目指し、関連分野の専門家を招き、関係学会・団体との連携を図りながら、「野外教育学とは」「体験とは」「自然とは」といった本学会の本質的なテーマを、学会大会等の場で議論し続けてきました。大きく変化し続ける社会の中で、野外教育の役割や重要性といったまさに不易のテーマを絶えず見つめ直してきたと言えます。私たちの想像の域を超えて変化し続ける未来社会において、この営みの継続は必要不可欠であり、そのことが野外教育研究の広がりと深まりに繋がるものと信じています。

 本学会が野外教育における不易流行を念頭に置いた活動を進展させるキーワードをひとつ挙げるとすれば、それは多様性ではないかと思います。経験豊かなベテラン会員、新鮮な発想と価値観を持った若手会員など、多様な人材が自由闊達に議論できる場や機会が必要です。本学会の設立趣旨にある「野外活動、自然体験、冒険教育、環境教育、森林・林業教育、博物学、自然解説、自然保護、自然療法、自然公園、自然を活用した観光や地域振興等」といった多様な領域に携わっている実践者・研究者やその関係団体によるさらなる連携が必要です。日本野外教育学会の会長として、「野外教育における不易流行」を常に心に留め、多様性を重視した学会活動が進められるよう、その調整役として注力していきたいと思っています。学会員の皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。