日本野外教育学会研究倫理規定

第1章 総則
日本野外教育学会は、会員の研究における知的誠実さを涵養し、学術研究の信頼性と公正性を高めることによって、野外教育学の研究が社会の理解と協力を得て適正に推進されることを目的に、会員が守るべき研究倫理に関する規定を定める。

(目的)
第1条
この規定は、日本野外教育学会会員(以下、会員という。)が行う野外教育学研究に関わる諸行為を適正に推進することを目的に、次に掲げる事項を基本方針として定める。
(1)研究計画の適正性
(2)研究費の適正使用
(3)協力者の同意
(4)個人情報の保護
(5)成果発表の適正性
(6)権力行使の適正性等
(定義)
第2条 定義について
1.「研究」には、研究計画の作成、実施、成果の発表、成果の審査に関わる全ての行為と結果を含む。
2.「研究倫理」とは、研究に関わる捏造、改竄、盗用、権力の不正な行使、研究の対象となる者の固有の権利の侵犯や自然の汚染・破壊などの、社会的規範から著しく逸脱した行為を防止し、研究に関して社会的模範となるような行動の規範をさす。

第3条 遵守義務について
1.会員は、野外教育研究が主として人間及び自然を対象として行われるところから、率先してその倫理を遵守し、人間の健康と福祉、環境の保全に対する責任を果たすよう努めなければならない。
2.会員は、研究には人間としての良識、知的誠実さと倫理が要請されることを自覚し、本規定に従って行動しなければならない。
3.会員は、研究にあたって常に最新の研究方法、最新の先行業績を探求し、自己の研究水準の向上に努めなければならない。

第2章 規定の内容
第4条 研究計画の適正性について
1.会員は、野外教育学研究における倫理規定に反することがないよう、科学的合理性を備えた明確かつ具体的な研究計画を立案しなければならない。
2.会員は、研究によって得られる利益(研究対象者、社会、自然)と危険性のバランスを勘案し、期待される利益よりも起こりうる危険が高いと判断される場合には、研究を中止しなければならない。

第5条 研究費の適正使用について
1.会員は、外部資金(研究費)を導入して研究する場合には、申請した研究計画から逸脱した目的に流用されることがないように会計を明瞭にし、支出に関する領収書などの証拠書類の整理保存に努めなければならない。
2.会員は、研究費の供与機関および導入機関の定める執行規定を遵守しなければならない。

第6条 協力者の同意について
1.会員は、研究を実施する場合、協力者に対して当該研究に関する必要な事項(研究の意義、目的、方法、研究に参加することにより期待される利益、起こりうる危険、協力者が被る可能性がある不利益、結果の取扱等)について事前に十分な説明をし、了承を得なければならない。もし、協力者が18歳未満の場合、あるいは協力者に説明することが困難な場合は、あらかじめ書面あるいは口頭にて保護者、あるいは協力者の意思及び利益を代弁できると判断された者に説明し、了承を得なければならない。
2.会員は、協力者に対し、いつでも不利益を被ることなく研究への参加を取りやめ、又は参加の同意を撤回する権利を有することを説明しなければならない。

第7条 個人情報の取り扱いについて
1.会員は、職務上知り得た個人情報やデータは、個人情報保護の観点から、個人が特定されないよう十分に配慮して取り扱わなければならない。
2.会員は、収集した個人情報が漏洩しないよう適切に管理しなければならない。
3.会員は、個人情報の取り扱いを外部に委託する場合には、個人情報の安全管理方法の明確化を求め、保護の徹底を義務づけなければならない。

第8条 調査及び実験について
1.調査及び実験においては、その手続、方法が正確かつ詳細に示されなければならない。
2.調査及び実験結果の改竄は厳に慎まなければならない。解釈を容易にするための意図的なデータの削除も、削除あるいは代表的データを選択した客観的な基準、理由が明示されていない場合は同様である。
3.調査用紙(質問紙)及び実験計画書、資料、結果データ等は、開示要求に対応すべく適正な期間保存しなければならない。
4.他者が行った調査で使用された調査用紙(質問紙)及び実験計画書、資料等を使用する場合には、その旨を明示しなければならない。

第9条 成果発表の適正性について
第9条の1  引用について
1.論文中に他人の研究成果を使用する場合には、必ず本文にその研究を引用し、引用文献欄にもそれを記載しなければならない。それが明記されていない場合は、盗作もしくは剽窃として最も重大な倫理違反の一つとなることを強く自覚しなければならない。
2.引用に際しては、原著者名・文献・出版社・出版年・引用箇所を明示しなければならない。
3.出典を明記する場合でも引用がかなり長い場合は、原則として、原出版社もしくは原著者か
らの承諾を得るべきである。
第9条の2  二重投稿について
1.会員は、同一の研究成果を報告した論文を複数の研究誌に投稿してはならない。
2.会員は、すでに投稿あるいは公表した論文を本学会において発表する場合には、内容の変更・追加などの箇所を明示しなければならない。
第9条の3  差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語について
1.会員は、研究に際して差別的とされる用語や社会的に不適切とされる用語を使用してはならない。ただし、研究の目的上やむをえない場合や引用文中の語についてはこの限りではないが、使用する理由や引用である旨を明示しなければならない。
第9条の4  査読について
1.査読においては、著者と査読者双方の匿名性が保持されなければならない。
2.査読の全過程において、公正で客観的な評価と指摘内容の明確性が担保されねばならない。
3.査読結果に対して、著者から要求がある場合には、その反論が許されねばならない。

第10条 権力行使の適正性等について
1.会員は、大学・研究所あるいは共同研究組織等において、自らの地位や立場を利用して他の
研究者や職員、学生等に対して研究・教育・資格付与・昇進・配分等で不当な差別を行ったり、
不利益を与えてはならない。
2.会員は、大学・研究所あるいは共同研究組織等においてセクシャルハラスメントと目される
行為を行ってはならない。
3.会員は、対象を特定し、もしくは特定せずに、不当な中傷を行ってはならない。

第3章 倫理審査委員会
第11 条 倫理審査委員会の業務について
1.委員会は、野外教育学会研究倫理規定の目的を達成するため、本学会の理事長(以下、「理事長」という。)の指示の下に以下の業務を行う。
(1)この規定の改廃に関する審議
(2)会員の研究倫理向上に向けての取り組みに関する提言
(3)理事長からの諮問に基づく倫理規定違反に関する裁定案の答申
(4)その他、委員会が必要と認める業務

第12条 委員会の構成について
1.委員会は、本学会の理事の互選により選出された委員5人及び理事長によって指名された会員若干名をもって構成する。
2.委員長は、委員の互選とする。
3.委員の任期は2年とする。
4.委員は再任を妨げない。

第13条 委員会の運営について
1.委員長は、理事長の命を受けて委員会を開催し、議長となる。
2.委員会は、委員の3分の2の出席をもって成立するものとする
3.委員会は、出席委員の5分の4以上の賛成により決定を行う。
4.委員長に事故があるとき、又は欠けたときは、委員の内からあらかじめ互選により指名され
た者が委員長の職務を代理し、又は委員長の職務を行う。

第14条 委員会の報告について
1.委員長は、理事長から審議を附託された日から起算して3ヶ月以内に、審議の結果を理事長に報告しなければならない。
2.第11条の1の(4)に定める諮問については、委員長は、理事長への報告に際し、その研究倫理規定違反をした者に対してとるべき処分としての厳重注意、一定期間の学会参加への停止、会員資格の取り消し、その他の裁定案を答申するものとする。

第15条 裁定について
1.裁定は、本学会理事会において理事の3分の2以上の議決によって承認を得た後、理事長がこれを行う。

第16条 改廃手続について
1.この規定の改廃は、委員会の議を経て、本学会理事会において理事の3分の2以上の議決によって承認を得た後、理事長がこれを行う。