2023年度 会長挨拶:平野 吉直(信州大学理事・副学長)

「野外教育における不易流行」

 1997年10月に開催された学会設立総会から、25年が経ちました。1997年と言えば、消費税率が3%から5%に引き上げられ、サッカー男子日本代表がワールドカップ本選への初出場(フランス大会)を決めた年でもありました。学会設立が「ついこの間」のことのように感じる反面、四半世紀を経たことになり、当時生まれた方が本学会で活躍されていることを考えると、それ相応の歴史を感じます。

 この25年の間に、私たちを取り巻く社会は激変しました。科学技術の進展、特にここ数年のデジタル革新の進行は目覚ましく、AI、IoT、Society5.0、GIGAスクール、5G、DX、ChatGPTなど、初めて聞く言葉が次から次へと出現し、その度に意味や背景を調べ、自らの生活や仕事に及ぼす影響を思いめぐらすことが続きました。そしてCovid-19の感染拡大は、世界中の人々の生活を一変させ、「ニューノーマル」という言葉が私たちの日常を闊歩するようになってきました。オンライン授業、オンライン会議、オンライン学会大会などが、当たり前のように行われています。

 「不易流行」という言葉。若い頃は、『新しく変化する「流行」に目を奪われ、変化させてはならない本質的な「不易」を見失うな』という教えであると間違った解釈をしていました。本来の「不易流行」の意味は、松尾芭蕉の俳諧理念のひとつで、諸説あるものの「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと」とされています。本学会のこれまでの活動をふり返ると、学術団体としてのアカデミズムの追求に加え、野外教育の発展を目指し、関連分野の専門家を招き、関係学会・団体との連携を図りながら、「野外教育学とは」「体験とは」「自然とは」といった本学会の本質的なテーマを、学会大会等の場で議論し続けてきました。大きく変化し続ける社会の中で、野外教育の役割や重要性といったまさに不易のテーマを絶えず見つめ直してきたと言えます。私たちの想像の域を超えて変化し続ける未来社会において、この営みの継続は必要不可欠であり、そのことが野外教育研究の広がりと深まりに繋がるものと信じています。

 本学会が野外教育における不易流行を念頭に置いた活動を進展させるキーワードをひとつ挙げるとすれば、それは多様性ではないかと思います。経験豊かなベテラン会員、新鮮な発想と価値観を持った若手会員など、多様な人材が自由闊達に議論できる場や機会が必要です。本学会の設立趣旨にある「野外活動、自然体験、冒険教育、環境教育、森林・林業教育、博物学、自然解説、自然保護、自然療法、自然公園、自然を活用した観光や地域振興等」といった多様な領域に携わっている実践者・研究者やその関係団体によるさらなる連携が必要です。

 日本野外教育学会の会長として、「野外教育における不易流行」を常に心に留め、多様性を重視した学会活動が進められるよう、その調整役として注力していきたいと思っています。学会員の皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。


第10期(2021年度総会~2024年度総会)

役 員

職名担当氏名所属
会長 平野 吉直信州大学
副会長 諌山 邦子前・北海道教育大学釧路校
理事長 坂本 昭裕筑波大学
副理事長編集委員長千足 耕一東京海洋大学
副理事長 中野 友博びわこ成蹊スポーツ大学
理事総務委員会総務委員長多田 聡明治大学
理事向後 佑香筑波技術大学
理事土方 圭明治大学
理事渡邉 仁筑波大学
理事広報委員会広報委員長小森 伸一東京学芸大学
理事伊原久美子大阪体育大学
理事岡田 成弘東海大学
理事瀧 直也信州大学
理事山田 亮北海道教育大学岩見沢校
理事編集委員会井上真理子森林総合研究所多摩森林科学園
理事遠藤 知里常葉大学短期大学部
理事甲斐 知彦関西学院大学
理事蓬郷 尚代中央大学
理事吉松 梓明治大学
理事企画委員会企画委員長野口 和行慶應義塾大学
理事築山 泰典福岡大学
理事西村 仁志広島修道大学
理事濱谷 弘志北海道教育大学岩見沢校
理事林 綾子びわこ成蹊スポーツ大学
理事張本 文昭沖縄県立芸術大学
評議員議長星野 敏男明治大学
評議員監事佐藤 初雄NPO法人国際自然大学校
評議員監事久保田康雄NPO法人千葉自然学校
評議員 村越 真静岡大学

委 員

職名担当氏名所属
委員総務佐藤 冬果東京家政学院大学
委員総務大友 あかね筑波大学
委員編集布目 靖則中央大学
委員編集近藤 剛鳥取短期大学
委員企画青木 康太朗國學院大学
委員企画高瀬 宏樹国立青少年教育振興機構
委員企画本村 明夏国立青少年教育振興機構